『HOTEL』ゲスト紹介のトリを務めて下さるのは『芳賀正次さん』。
彼はこれまで過去5回のstudio CAST名義での公演には必ず主役として出演して頂いている僕の作品には不可欠な存在の御方です。
ダンスとは身体表現ではありますが、同時に心の動きが重要なファクターとなります。特に演劇性が強い僕の作品ではますます『心で踊ること』が大切になります。
常に周囲を気遣い、観客だけでなく出演者もスタッフも楽しませてくれようとするその過剰なサービス精神には半ば呆れつつもやはり敬意を払わずにはいられません。
ご自身に対する評価は『コメディエンヌ』だそうですが、彼が深い眼差しで佇んでいる姿はどんなベテラン俳優にも劣らないシリアスな演技を越えて涅槃の領域にまで達していると感じることがよくあります。
そして、小賢しいテクニックでスカして踊って悦に入っている僕自身はその度に打ちのめされます。
今回、彼は支配人、僕は副支配人、という役柄設定のため絶えず彼の側で演技をしていることが多く、それに加えて僕は彼の心情描写を担当するシーンも幾つかあり、謂わば分身のような役回りを請け負っていて気付かされたことが沢山あります。
その一つが『背中が語る』。
お客様から観て、遠くからでも感じて頂けるとは思うのですが、彼の数㎝後ろに立つと背中から蒸気のようなものが立ち上っており、それが不定形に形を変えながらこちらにこれからどう動くかを伝えてくるのです。最初は心霊現象なのかしらん?と不謹慎なことを考えたりしましたが、今ではそれが心地好く、僕が彼を操っているのではなく、彼が僕を操らせてくれることにこの上ない快感を覚えます。
本当に凄い方です。
浅はかに観る方は彼をただの面白いおじさんと観るでしょう。しかし、僕は一見可笑しなことばかりしていてとてつもなくフレンドリーに接してくれる人こそ最上級の人間であり示唆に富んだ存在であると思っています。
昨日、スタッフ勢揃いの前で衣装つき初通しをしました。
始まる前の彼の一枚。尊いです。
本番をご覧頂く皆様のためにネタバラシはせずモノクロで載せました。
どうあがいても10日後には劇場入りしなくてはならなくなりました。まさにまな板の鯉の気分です。落ち着こうとはしますがやはり始終ザワザワとしたものが胸の中にあります。でも、この写真を見ていると一時安らかな気持ちになれます。