「餅は餅屋」という諺があります。
分からないことはその道の専門家に聞くべし、その道の専門家が作るものが間違いない、等の意で使われる諺ですね。
これをきちんと守ろうとすると少々困ったことが起こります。
ダンスをご指導させて頂く際に、基本的な身体の使い方や振付の動きの順番や振付に込められた意味などを機械的に杓子定規的に伝えていると、誤った理解や身体の故障や想像力の欠損という弊害を生みがちです。
感覚の優れた(というよりは、ダンスや他のアートに通じている、というべきでしょうか)方々は、もし仮にマニュアルから外れない機械的な指導者に当たったとしても、その類い稀なセンスとテクニックで与えられた知識以外の広い領域にまで理解を深めてしまうことでしょう。
しかし、世の中、そんな方々は逆に珍しい存在。小さなことをコツコツと積み上げながら長い期間をかけて学ばなくてはならない方々の方が多い訳ですから、そんな風に一生懸命頑張っていらっしゃる皆さんの味方でありたい、と思うのです。
ここに「餅は餅屋」の例えがようやく出てくるわけですが、少しでも皆さんに理解を速めて頂いたりどうせ学ぶなら楽しく学んだ方が良いですよねぇという考え方の元、杓子定規に基礎練習をひたすら反復するのではなく、ダンスに一見何も関係ない例え話をしたりイメージが限定され過ぎないように日本語の歌詞の曲を極力使わない、などの工夫をなるべく沢山するようにしています。
つまり「餅は餅屋」から少々逸脱して、異なるジャンルの世界観を拝借しつつ本来の目的であるダンススキルの向上に結び付けようとしているのです。
しかし、それらの拝借するエピソード全てに関して僕自身がプロフェッショナルであるはずもなく、その殆どは深みのない聞きかじり、なのです。「一芸に秀でるものは多芸に通ず」が僕だとは口が裂けても言えません。ただ、感覚的にこれとこれを繋げたらより豊かな表現になるよね、ということを本能的に察知する力が少しだけ強いのでそのジャンルに精通していなくともなんとなく理屈がわかってしまう。故に、それを例え話として聞かされたらイメージ豊かに理解できるよなぁ、という誠に漠然とした感覚で皆さんに伝えてしまっているというわけです。
「餅屋」が聞いたらほとほと呆れてしまわれるような有り様ではありますが、この高田純次先生仕込みの「テキトー例え話」を面白がって楽しく学んで下さる方々が少なからず居ることを励みに台風一過の今日も「左官の垣根」をモットーに皆さんを巴投げさせて頂く所存です。