思考が絡まって胸焼けに似た感覚がずっと続いている。不用意に触れられると飛び上がるぐらい痛みに似た感覚を覚える。何をしている間もぼんやりとしているのではなく常に濃厚な多種の思考に取り巻かれて不意に現実が戻るとかなりの長距離を歩いていたことに気付く。
しかしそんな異常な時間もあと2ヶ月足らずで終わってしまう。
終わらせたい、と願う気持ちと、終わらせたくない気持ちが葛藤している。
絶えず新しい刺激が訪れて、そんなものに甘んじてはならないと背中をグイグイと押す。ならばと気を入れ立ち向かおうとすると、遥か彼方で理想は嘲るようにヒラヒラと舞う。
誰に頼まれた訳でもなく、自らの意志でそうしようと決めたのに、どうしてこんなことをやっているのか馬鹿らしくなることが一日に何度もある。
まだまだ弱いなぁ…と情けなくなり、こんな弱音を吐かずしてクールを装っていとも簡単にサラリと80分の大作が産み出せたら相当カッコいいな…と憧れるが、残念ながらその境地は生きてる間には辿り着けないだろうなぁと分かっている。
今はリハーサルで頑張ってくれているメンバーの真摯な在り方と楽しみにして下さっているお客様の声と日々の仕事でのささやかな達成感だけが心の支え。
とは言うけど、それだけあれば十分。どころかとても幸せなこと。
先日、公演に出演して下さる御方の舞台を観てきて、この堂々巡りの思考に良い意味で喝が入った。前作があまりにも音楽的色彩的で心地好く台詞の意味を噛み締めずとも夢見心地で鑑賞できたのに対して、今回の作品はお芝居直球勝負。日頃台詞を追うことに慣れていない耳には少々辛い1時間15分。夢見心地でなんて鑑賞できないけれど深々と降り積もる雪のように種々雑多な感覚が心の底に沈着していった。
初日の後で相当お疲れだと思うのに主宰がその日の夜電話をくれた。歯に衣着せず言いたいことを伝えた。彼の想い、僕の想い、人が違うのだから相容れなくて当たり前。しかし、幾つもの共通点を見出だせて非常に興奮した。
どうして彼はあの作品を手掛けたのか、そして僕はどうしてこの作品を創っているのか、ようやくトンネルの先に光が見えてきた。
やはり僕は幸せだ。そう確信した。