昨日は上演から半年経ってのようやくの出演者のみでのDVD鑑賞会でした。
半年も経ってしまっているので、皆さんすっかり他人事。食い入るように画面に見入っていて、シーン毎の合間の暗転中にホウッと溜め息をついたり唸ったり泣いたり笑ったり、挙げ句の果てに『すごいねぇ』感嘆の声を漏らすという
完全に一般のお客様なご様子。
でも、そういう彼等だからこそ僕が出演をお願いするに至った訳ですし、作品を委ねられたのです。
舞台人としての最低限の義務や計算は持ちつつも、屁理屈を捏ねず無駄な自己顕示欲を抑え、無心で作品のために尽くす。
きっと、本番直後にお客様から色々な言葉を掛けて頂いても本人達は何とも答えられなかったことと思います。
だって、自身の目で客観的に作品全体を見渡せていなかったのですから。それこそ全員が不安で仕方なかっただろうと察します。しかし、作者の僕を信じて心と身体を預けて下さった結果、あんな凄いものが出来上がってしまいました。
DVDで観ても相当凄いのですからこれをライヴでご覧になった皆様はどうお感じになったのでしょうか…皆さんの脳に入れるものなら入って全てを感じ取りたい気持ちで一杯です。
出演者全員のそれぞれの役割に対する理解と探求心から成る圧倒的な存在感、世界観にあくまでもソッと寄り添いそこはかとないエロティシズムを漂わせる絶妙な照明、出演者もお客様も気付かぬように繊細且つ大胆に心を揺さぶる音響、微妙な心理戦がテーマであることを本能的に察知して構築してくれた衣装のグラデーション、そして全てを舞台裏で愛情豊かに見守ってくれていた舞台監督。
全ての絶妙なバランスの上に成立していた脆く崩れそうなのに頑強に揺るがない世界観が、実はあることによって完璧に仕立てられていたのです。
それは、メイドが扱っていたハンガーラック。
稽古の殆んどをラックの幅のタオルを二人で引っ張った状態でこなしていて、本番仕様の布をきちんと張った状態で練習できたのは本番数日前の一回のみ。それも他の演者が居ないシチュエーション、且つ抜き稽古だった訳ですからよくぞ本番四回を完璧にこなせたものだと心底驚いています。
こなす、という表現は相応しくありません。こなすどころか彼女達はラックと一体化し、まるでラックに自らの意志があるかのように滑るように動き続けそれぞれのシーンを際立たせていたのです。
裏話を彼女達から聞くと相当大変だったようです。全ての順番を正確に把握しているメンバーは一人も居らず、絶えず声を掛け合って気持ちを合わせて動かしていたそうです。
彼女達10人のメイドの人選はこれまた本能的なものでした。長きに渡り尽力してくれているメンバーもいれば、知り合って数ヶ月のメンバーも居ました。しかし、『この10人ならいける!』と微塵の不安も持っていませんでした。思い返せばかなり早い時点で彼女達はチームとしての団結力を表していました。全員がフワフワとしていてリーダー不在の強固な団結力。そんなナンセンスな奇跡が起こっていたからこそ、僕も安心して全体の演出に没頭出来ました。
そんな彼女達なのに、昨日はすっかりいつも通りの天真爛漫な在り方。画面を子供のような顔で見つめながら『すごいねぇ、素敵だねぇ』を連発する彼女達に、『いや、それ、貴女達が成し得たことだから』とツッコミたくなる気持ちをグッと抑えて穏やかな気持ちで見守っていました。
DVDの販売予約は12/15(土)にて終了してしまいましたので、本番を見逃しDVDご予約もタイミングを逸してしまった皆様、いつかどこかでまたお目にかかる日をお楽しみに!