慣れ方を習え習うより慣れろ、という言葉がありますが、僕はこの解釈について一言申し上げたい。 確かに習うことだけ一生懸命やっていても応用力のないガチガチの石頭になってしまう危険性があり、その環境に慣れて世界観をしっかりと身体に馴染ませて学ばないと本末転倒、という意味でこの言葉は存在すると思うのだが、「慣れろ」の解釈を間違うと折角の格言も無用の長物。 「慣れる」プロセスの中に「だれる」「甘んじる」「審美眼が衰える」の三大悪が混入してはならないのである。 長らく学びの場に居ると、どうしてもある程度「わたしはこれだけ学んだし、まぁいいか」と自分を甘やかす思考に陥りがち。上を見たらキリが無く幾らでも成長出来る余地はあるのに、程々に出来る自分を良しとして成長しようという意思を捨ててしまう。そして、与えられた課題をダラダラとなぞって満足する。 ダラダラとなぞって満足することも別に悪いことではない。「継続は力なり」という新たな美徳によって護られるからだ。しかし、そこに「加齢」というブラックホールのような恐ろしい概念があることに多くの人は気付こうとしない。いや、その恐ろしささ十分知っているからこそ気付きたくないのだ。「加齢」は残酷だ。継続で得た力をゼロどころかマイナスにしてしまうほどの驚異的なパワーで「維持」では済まされず容赦なく「劣化」させるのだから。 この「劣化」を食い止めるために僕は己の身体を犠牲にして日々毒舌を吐いている。何もそこまで言わなくても…と思うことも敢えて口にする。ブラックホールに吸い込まれそうになっている宇宙船の操縦席で、「私はまだ飲み込まれる訳にはいかない!」と操縦桿を握っている人のために。 思い返せば、数年前まで僕は慕って集まってきて下さる皆さんを甘やかしてきた。甘やかしていたつもりはなく、個人の意思を尊重し自由にのびのびと学んで貰おうと配慮した結果だったのだが、まるでゆとり教育の弊害よろしくボウボウに生えた雑草だらけの庭状態になってしまい、これはイカン!と方針を変更。 「慣れる」など有り得ない。常に新鮮な学びが無ければレッスンを受ける意味などない。目から鱗が剥がれ落ち続けて目玉が消滅してしまうぐらい膨大な気付きを提供出来るようにいつでも自身が邁進していなければならない。 去年からパーソナルトレーニングを始めたのも、今年から映像作品を何本も撮っているうちにカメラにハマってしまったのも、自分の在り方を根底から見直す良いキッカケになってくれた。どれも頑張って体当たりで臨むにも関わらず、上手く行くことの方が少なく、大抵は敗北感を味わうことになる。そんなダメな自分が恥ずかしいから次に同じことをやる時は失敗しないように歯を食いしばって臨む。これこそが「慣れる」ことだと思う。 こんなことを2日かけて書いていたらまたしても糸井氏の言葉が奇跡的なタイミングで降ってきた。 心の中を覗かれているようでなんだか恥ずかしい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・よく、「失敗」が大切だと言われるのだけれど、どうしてそれが大切なのか、じぶんに説明できたことがあったろうか。人には言える、平気で言えるし、信じつつ言える。「失敗が、なにより大事な経験になる」と説ける。 しかし、じぶんの失敗については、納得しないままに「失敗も経験だから」と、慰めるように、あるいは半ばあきらめたように、思いこむことが多いような気がする。 ずいぶんと大人になってから、「失敗」が大切な宝であることが、わかるようになる。いろんな大人が、それを教えてくれると思うが、ぼくにとって、いちばん簡単な説明とはこういうことだ。「失敗は、やろうと思ってできないから」、これだ。やろうと思ってする「失敗」、というものはない。やろうと思って、うまく「失敗」ができたとしたら、それは、ただの「計画の成功」だ。だれも「失敗」なんかしたくないし、どうやって「失敗」しないかさんざん考えているのに、してしまうのが「失敗」だ。つまり、「失敗」というやつはうまくいくための「計画の網の目」をかいくぐって、やっと出現してくれる「貴石(奇跡)」なのである。 「失敗」と出合って、そこで終わりにならなければ、(できたら元気に)生き続けてさえいたら、「あの失敗があったおかげ」に気づくことになるだろう。あらゆる周到な計画も、いかにもでっかい夢も、「失敗」という宝に出合えぬままでは、ありふれた「ただの成功」にしか届かないだろう。 「失敗」という「貴石(奇跡)」は、運命と呼ばれる「つながり」のなかにあって、ひときわ輝く宝石である。ほしいと思っても与えられぬ宝の石だ。こんなものさえなかったらと忌避されていたのに、それがあったからこそ、すべてがつながってくれる。「失敗」のある人生にこそ、感謝と歓喜を。 今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。気取って書いてますけど、なにかあったわけじゃないです。
by reijiro_kaneko
| 2019-08-18 13:09
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