突然ですが、僕はヤカンでお湯を沸かすのをずっと見ているのが好きです。
ヤカンにお水を容れて火にかけ、しばらくは何の変化も無いように見えて、数分経つと突然蓋がカタカタカタカタと鳴り出し、「はーい!僕達沸いたよーっ!」と水の分子の大合唱が始まる。
この世の中、目に見えるものだけが、耳に聴こえるものだけが、変化の兆しとは限らず、何気なく見過ごしてしまっていることが実は大きな変化の序章であったりすることが沢山ありますよね。
それをサラリとアートとして具現化してくれる人が、例えばMax Richterという人だったりします。
過去に何度もダンス動画を撮ってYouTubeなどにアップしてきましたが、色々やってみた結果実は僕がやりたいことはデビュー作の「Like a movie」の最後のパートに集約されているのかもしれないと上記の動画を観て改めて考えさせられました。
ダンス動画としては面白味に欠ける、ただ歩いているだけの映像。しかし、そこにはある程度の時間経過と共に感情の揺らぎが発生し出し、被せられた音楽によってそれらの感情の温度は一定に整えられてしまうけれど、観る側の気分によって如何様にも読み取れる、そんな映像をまた撮りたいなぁと最近よく思うのです。
大好きなこのお方の動画もやはり同じような感覚を引き出してくれます。
こちらも後半で少しだけ女性が声を張る以外は不気味な程淡々と音が紡がれ、カメラは延々に周回しているのみ。
どんな人にも分かりやすい激情型の小作品を創ることに少々辟易し、巷に溢れる流行りのギュウギュウ詰めのダンス作品にウンザリしていたある早朝、この2つの作品に出会えたことはまたしても何かの引き寄せであることは間違いないと、僕の中でのゆったりとした潮の満ち引きが教えてくれている気がしてなりません。