シアター21アドバンス公演を終えて思うこと
9/20・21の両日開催されました『シアター21フェス アドバンス』にご来場下さった皆様、本当にありがとうございました。温かいお言葉も沢山頂き、これからの励みになりました。
今回、作者の坂本君から声を掛けてもらい、リハを何度か重ねていくうちに露になったいくつかのことがあります。 まず、心から大好きな相手と満足のいく作品が創れるとは限らない。もしかすると苦手な相手とだからこそ良い作品が生まれる可能性の方が高いのかもしれない、そんなことを考え始めました。正直なところ、彼の求める世界はほとんど理解できぬまま舞台に乗ってしまいました。「普段の礼二郎さんは抑えて」「芝居はしないで」「一生懸命踊って」その3つのキーワードだけをきちんと守って踊りました。以前にも苦手な演出家・振付家と仕事をした時に「気持ち良く踊る」ことを放棄し、ひたすら言われるがままに踊って、好評価を得たことが何度もあり、そういう状況が苦ではないのですが、今回ばかりは二人きりなので非常に苦痛でした。一体どこに向かっているのか全く予測不能。構成もころころ変わり練習しようにもどこから手をつけていいのか分からず、ある日ついに「段取り決めて!」とキレてしまいました。 僕のソロに関しては彼は口出しはするけれど、最終的には僕に任せるとのことだったので、何度かやってるうちに飽きてしまったクラスでお馴染みの振りを照明合わせの時に無理矢理やることにし、中盤の自由演技の部分もある程度振りを決め完全な即興ではなくなるように調整。最後はゆっくりとした動きなので相手に合わせるとして、問題はリフトの部分。こればかりは僕の思ったようには彼は動いてくれないので、出たとこ勝負にして万が一失敗してもそれはそれ、と割り切っていざ本番に臨んだのです。 ここから二つ目の開眼。 照明が入り、音量大きめで音楽もついて、「いえーい!踊っちゃうぜー!」という気分とは全く逆の気分で板付き。照明が入った瞬間不思議なことが起こりました。お客さんの目線がほとんど動いていない彼の方ばかりに行っているではありませんか。僕を見ている人も何人かいますが直視している人は稀で、どこか見てはいけないものを見ているような挙動不審な見方なのです。もともと、僕はあまのじゃくなので、「見られる」ことが不快でたまりません。おかしな話ですが、見てもらうために舞台に立っているのにどうしても「見んなよ、オラ!」という気分になるのです。 しかし、ここまで見られないと悔しくなります。むむむ、なんとかしてこっち向かせよう!と普段では考えられないぐらいハアハアしながら頑張って踊ってしまっている自分がいました。「くそー、格好わるいよ、俺!」と思いながら、でも見てもらえない悔しさよりはマシという複雑な心境で最初の3分を頑張って踊りました。 中盤でも不思議なことが。大好きなジェット・リーの真似パートの最後、地面に人さし指を付き、目の前の人を凝視するところで、三回とも目を合わせた人が絶対に目を逸らさないでいてくれたのです。ターゲットにした人が良かったのかもしれませんが、これも今までにない経験でした。大抵の人は見過ぎると目を逸らしてしまいます。でも今回は違った。もしかすると「逸らしたら殺すぞテメ=!」という恐ろしい本音がバレてしまっていただけの話かもしれません。それでも良い。そのぐらい気持ちが入って目を合わせれば人は絶対に目を逸らせないのかもしれない、という微妙な確信が持てたから。 そした最後の開眼。この作品は、僕にとって全く気持ちが入らない作品でした。何かを訴えようという気持ちなんて入り込む隙間など全く無く、ひたすら「一生懸命踊ろう!」と念じ続けていました。しかしながら、たくさんの方から意外な賛辞を頂き拍子抜けしています。創り続けている作品も観た上で双方を比較しながら評価をして下さった方もいらっしゃいますが、大抵は「あんな礼二郎は初めて見た」そして「ああゆう礼二郎をもっと見たい!」というリクエスト。 うーん、さっぱり分かりません。僕はやっぱりこの平和ボケした日本の中で、他人の体を投げ付けて痛めつける刹那的な苦しい表現を見て、それを良しとする風潮に疑問を抱かずにはいられません。いつ爆弾が降ってくるか分からない土地ではそういうことを題材にして「それでも強く生きていこう。生きていれば必ず救いは来る」というエールにもなるでしょうけれど、個人的なトラウマを題材にもがいたり苦しんだりしてるのを公の場に恥ずかしげもなく曝け出して、それで何がしたいのでしょう?そんなことはウチでやってればいい、そうとしか思えない僕は偏っているのでしょうか? それから、頑張って踊るのなんて当たり前で、その頑張ってる姿は舞台の上では見せずにいとも簡単にやってのけてることに感動し、そうなりたいと後続者が出るのが普通だと思うのですが、どうやらそうではないようです。何のための日々の努力なのでしょう?ここにも日本の永遠のアマチュアリズムへの傾倒が顕著に表れている気がして仕方がありません。 ショーアップされたものだからこそ、お金を払う価値がある。例え、始まりは個人的な古傷だったとしても、それを笑い飛ばせるぐらいの懐の深い演出がかかっていないと救いが無いじゃないですか? ちょっと感情的になりましたが、逃げも隠れもしません、これが僕の本音です。こうやってウェブ上だけでなく、突っ込んで質問してきて下さった方にも同じことを答えています。 そして最後に言っておかなければならないことがあります。これはあくまでも僕の意見です。これに右に習え、ではありません。人と人ですもの、完全に理解出来る相手なんて絶対にいないと思います。ですから、これからも「私はこう思う!」と堂々と僕の前でも発言してほしいと願います。それに対して「ばっかじゃねえの?」と僕が返したとしてもそれはゲームです。お互い曝け出しあって話しないとお互い成長しませんからね。 もしかしたらここのブログへの書き込みが少ないのも、「こんなこと書いたら先生の機嫌を損ねるんじゃないか?」とか「こんなことを言ったらメンバーからハブにされるんじゃないか?」とか思ってるからかしらん?などと妄想してみています。 ん?書き込むほど魅力のない内容だから? ああああああ、それは僕が頑張るしかないですね。おっし、面白いお話いっぱいかけるよう、みなさんが楽しくコミュニケーション出来るよう頑張ります!お楽しみに!
by reijiro_kaneko
| 2008-09-22 01:31
| 日記
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